私は走っていた。
私の上を走っていたんだ。
午後の3時頃だろうか。私は無性に外に出たくなったんだ。
家の中が安全であることはわかっていた。しかしもう飽きてしまったんだ。そういうことには。
世の中には色々な権利が存在する。しかしどの権利も決して私とは並走できない。
だって私は常に私の上を走っているからだ。そして私の上を走れるのは私だけだからだ。
私は私というサイボーグを、風に流される君を、どうしようもなく動かしていたかったんだ。
しかし、これは義務的なものであり権利などと言った私主体のものではない。
だって常に私の上には私がいるのだから。
朝、昼、晩三食食べる。
毎日風呂に入る。
私はすべてやったことがない。
やりたくないと言ったら嘘になる。やりたいと言っても嘘になる。
そう言いながらすべて下の私に任せる。これが私の日常だ。
ある朝、どうやら下の僕は具合が悪そうだった。一方僕はというと、極めて具合がよかった。
しかし、ただただ不安であった。足の下の下のほうから何かが押し寄せてくる。
同時にいやな予感が足の細部を駆け抜けていく。
そうしていつもの通り私は動けなくなる。細部まで駆け抜けた不安が体の中で膨張して私を締め付けてくるのだった。
私の心までそぎ落としてくる。
ただ感じていた。私の心が悲鳴も上げられず崩れ落ちていくその姿を。
そうして私の自発的な心は抑制されていく。
自発的な心と不安のギャップが私を消していく。
「何もされずに、出来ずに、見ているまま、僕は逃げることを願っていた。」
君の心に縛り付けられた僕はそうやってまた自分より上位の存在に気付くのだった。
上位の存在に気付いてもらえないという不安を体に打ち込みながら壁と今後も寝るのだった。